エアバスがデジタル変革のために「Greenhouse」を構築

本ブログは、北米の製造業向けメディア「SME」の航空宇宙&防衛に関する記事として掲載された内容を和訳したものです。ニュアンスは英語原文を優先します。

原文:http://content.yudu.com/web/y5b2/0A1wm9v/ME.September.2016/flash/resources/246.htm

エアバスのビジネスが好調であるということは言うまでもありません。グローバルな航空機メーカーであるエアバスは世界の商用航空機の半分を供給しています。最近では民間航空機部門で総額1兆ユーロ以上の新たなジェット機の予約があり、新規受注は10年先まで待たなければなりません。同社は結果として、より早く、より効率的に航空機を生産するために、エンジニアリング、テスト、製造および品質管理を効率化する革新的かつ新しい方法を考案するのに大変な労力を注いでいます。ITの視点からいえば、ビジネスの加速化とは、企業全体でチームがこれまで以上に素早く、そして簡単に製品データにアクセスし共有できるよう、デジタル変革を起こすことを意味します。これが、すぐれた製品品質を担保しつつ受注残を迅速に一掃する唯一の手段なのです。エアバスにおけるデジタル変革の物語の素晴らしい点は、彼らが何をしているのかということではなく、どのようにそれを行っているか、にあります。その物語は、エアバスのようなグローバルな大手企業でさえも、ITにおける革新的な思考がいかにビジネスに革命をもたらすかを浮き彫りにしています。エアバスは、エンジニアリング、テスト、製造および品質管理を滞りなく行うために1,000個以上のシステムに依存しています。ビジネスの効率化のために最新のものにし、アップグレードし、統合される必要があるとエアバスIT部門が認識していたのがこうしたアプリケーションでした。「問題は、IT部門が何年もかけてスクラッチからコードを書くことなく、如何にそれほど多くのシステムを最新のものにできるか、ということでした。」と語るのは、エアバスでPLMアーキテクチャとイノベーションを監督するHenrik Weimer氏です。「我々は、自分たちがデジタル革新にどうアプローチするかが、何を最新化するのと同じぐらい重要であることを早くから認識していました。」

Greenhouseへようこそ

エアバスのITチームは「Greenhouse」と名付けたITサポート環境を構築し、事業部門から担当者を招いてその環境のもとで彼らのアプリケーションを最新化および強化することによって、それまでのITアプローチを転換させました。

新しいシステムを事業部門に押し付ける昔ながらのトップダウンの手法を使う代わりに、エアバスのITチームは「Greenhouse」と名付けたITサポート環境を構築し、事業部門から担当者を招いてその環境のもとで彼らのアプリケーションを最新化および強化することによって、それまでのITアプローチを転換させました。

ITチームはそれから、極めてフレンドリーで歓迎ムードな宣伝キャンペーンを通じて、各事業部門のアプリケーションの所有者および開発者にGreenhouseのコンセプトを紹介しました。ユーザーはGreenhouseに招待され、Greenhouseがアプリケーションを最新化するためのリアルタイムなプロトタイピングや迅速な開発を行う手段であることを説明されます。さらに、従来のように、できないことについて警告されるのではなく、むしろ、拡張された企業(エクステンデッドエンタープライズ)全体で使えるよう自分たちのアプリケーションを迅速に“育てる”手助けをITがしてくれる、ということを教えられるのです。

「私たちはGreenhouseの機能を構築し、古く、サポートされていないシステムを社員たちが自主的に持ってくるよう呼びかけました。そして、そうしたソリューションを迅速に最新化し、“PDM light”と呼ばれるバックボーンに移すのには、新たなプラットフォーム技術を使いました。」と、Weimer氏は説明しました。「それは、IT部門が意思決定をし、システムをカスタマイズし、それを事業部門のユーザーに押し付けるという、大企業における従来のITモデルからの180度の転換です。」

事業部門のユーザーにGreenhouseのアプローチのメリットを確かに感じてもらうため、エアバスITチームにはPLM、PDM、CMS、プロジェクト管理などの分野のシステムに従来備わっている機能を含む、柔軟な技術プラットフォームが必要でした。

複数のPLM、PDM、CMSの製品を評価したのち、エアバスは、Greenhouseを実現する技術としてArasを選択しました。Arasのプラットフォームは柔軟で拡張性があり、アップグレードも可能であるため、エアバスが採用するアジャイルな導入プロセスをサポートします。また、カスタマイズされたアプリケーションも簡単にアップグレードができるので、所有コストの予測が可能になります。さらには、企業内の他のシステムを簡単に、そしてオープンに統合できることも重要でした。というのも、ITチームはPDM lightを補完的環境として取り扱い、Greenhouseの取り組みに当てはまらない幾つかの既存PLMシステムを使い続けることになるからです。

Greenhouseアプローチを開始して1年もたたないうちに、エアバスのITチームはGreenhouseを立ち上げ、事業部門のユーザーを巻き込み、多くのプロジェクトを生み出し、そして実現させました。今日、エンジニアリング、生産、品質および試験に携わる誰もが、アプリケーションを最新化したり開発したりするアイデアがあれば何でもGreenhouseに持ち寄ることができます。プロジェクトは企業の様々な部門からGreenhouseにやってきます。プロジェクトが十分に成熟してしまえば、その後は従来のITサポートで対応できるようになります。

「ユーザーは子供が砂場で遊ぶような感覚が気に入るのですが、Greenhouseは彼らの仕事をゆるく管理しながら補完し、プロジェクトの調整から自分たちのアプリケーションのための資金調達、そして今後のステップまでを経験させるようにします」と、エアバスでGreenhouse戦略を率いるVincent Soumier氏は述べています。「そうした上でITチームが将来にわたってガイダンスやサポートを提供すると分かると、ユーザーはさらに嬉しい驚きを感じるのです。」

Greenhouseがその一つ目のプロジェクトを育てる

Greenhouseに最初に持ち込まれたシステムは、試験情報管理のための古びたアプリケーションでした。その複雑さとスコープは最初のプロジェクトとして適したものでした。「当社では拡張エンタープライズを含む複数サイトでオペレーションが行われています。そこでピラミッドのように積み上げられる構造試験全体にわたるエンドツーエンドの航空機試験データ管理システム導入の成功は、Arasでの複雑なエンタープライズ・ビジネスプロセスの実現が可能であることを証明しています。」と、Weimer氏は述べています。プロジェクトは短期間で完了し、そのことによってGreenhouseのコンセプトとPDM lightバックボーンの正当性が他の事業領域でも認められることになりました。システムが迅速に開発され、ユーザーに受け入れられただけでなく、エアバスは最初の開発からわずか5ヶ月後にアップグレードにも成功しました。

Greenhouseの成功に関する噂が広がるにつれ、他にも自分たちのシステムをアップグレードしたいという問い合わせがくるようになりました。いくつかの新たなプロジェクトがスタートし、次第に行列ができ始めました。エンジニアはGreenhouseでのコラボラティブなプロトタイピングを好み、数ヶ月以内に完全にサポートされたアプリケーションが完成すると感動してしまいます。そして、その迅速でスムーズな転換を一度経験すると、彼らはITにより多くを求めるようになるのです。「“わかりました、これからはあなたの製品を使い、自分たちだけのツールを開発するのはやめます”と、彼らは私たちに言ってくれました。これこそが私たちITチームにとっての大きなブレークスルーだったのです。」と、Vincent Soumier氏は述べています。

現在、社内の様々な部門でさらに多くのユーザーがGreenhouseを利用しています。ITはますます機能が強化され、プロセスの規模は拡大し続けています。新たなアプリケーションが毎月のように持ち込まれるようになるにつれて勢いがつき、Greenhouseがちょっとしたブームになりつつあります。

ITにとっての生産性の恩恵

Greenhouseはエアバス社内に計り知れない成功をもたらしました。今では迅速なプロトタイピングが可能になり、その需要はますます高まっています。実際、今では専用のプロジェクトパイプラインもあります。

エアバスのHenrik Weimer氏によれば、Greenhouseは戦略上の3つのメリットをもたらしています。第一に、Greenhouseの存在によってエンジニアリング、製造、試験および品質における生産性が大幅に向上し、航空機を想定より早く納品できるようになりました。2つ目に、エアバスは現在出来うるなかで最も早く、最も迅速(アジャイル)なやり方での生産を実現するためにシステムを最新化しようとする際、最もコスト効率のよい方法を習得することができました。そして3つ目のメリットは、革新的なアプリケーションを迅速にオンライン上に乗せることができるようになった結果、組織的な変化が起こっているという点です。

「自分たちは今や多くの試練を経ることなく、優れた新しいアイデアやプロセスを制度化することができるのだと、皆が思っています。」と、Weimer氏は言います。「私たちがさらに大きな変革をめざそうとする際、そうした革新的な思考があれば、より迅速(アジャイル)なやり方で前に進むことができるでしょう。」

結局、エアバスITチームが証明したのは、彼らが問題にどのようにアプローチするかが、それを解決するために何をするかと同じくらい重要であるということに他なりません。エアバスのGreenhouseという画期的な方法は、アプローチプロセスを再考し、各地の工場や拡張された企業(エクステンデッドエンタープライズ)全体にわたるエンジニアリング、テスト、製造、品質管理のためのITアプリケーションを最新化することによって、必ずやデジタル革新を推進するものになるでしょう。

本記事はAras社(マサチューセッツ州アンドーバー)から提供された情報をもとに、Advanced Manufacturing Mediaが編集したものです。

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