プロダクトライフサイクルの情報管理はどうすれば実現できるか?①

設計部門に「現在どのようなシステムが導入されていますか?」と聞くと、多くのお客様から「うちではPLMシステムを買ったけどもCADデータ管理程度しかつかえてなく、PDMシステム止まりです」という返事をよく聞きます。

PLMシステムというカテゴリーのソフトウエアが日本市場に登場して約20年ほど経ちますが、なぜPLMシステムの導入まで進まない企業が多いのでしょうか?

今回は「なぜPDMシステムは構築できるのにPLMシステムが構築できないのか?」という点を解説すると共に、「PLMシステムを構築するために必要な要件」を明らかにしていきたいと思います。

PLMシステムの特徴を今一度確認してみましょう。

図0

PLMシステムとは、製品のライフサイクルに渡る様々な情報を、相互に関連付けて、統合して管理し、業務に必要な製品情報を、必要とする人に、正しい情報を、提供するシステムといえます。

方やPDM(Product Data Management)システムとは、設計時に作成される、CADデータやBOM情報を、一元管理し、複数の人と、データを共有することで、コンカレントに、設計作業を実現するシステムといえます。

ここで言っているPDMのプロダクトデータとは、多くの場合CADデータのことを指しています。

このように定義すると一見PLMシステムとPDMシステムはよく似ていますが、二つの点で大きく異なる特徴があります。

一つはPLMシステムで管理されるデータは、「プロダクトのライフサイクルで発生する様々な種類のデータが管理対象」となっているのに対し、PDMシステムで管理するデータは「CADデータや一部のドキュメントファイル」と言った限定されたデータだけを管理しています。

二つ目はPLMシステムは「業務に必要なデータを必要な形で提供している」のに対し、PDMシステムでは主に設計(もっと限定すると図面作成)業務に必要なデータのみを提供できれば良いといった違いがあります。

このように定義してみるとPLMシステムとPDMシステムの違いが良く分かると思います。

PDMシステムは図面として作成されるCADデータを共有できるシステムとして構築できれば良いため、比較的用途も明確でパッケージ化されたシステムをそのまま導入することも可能です。

しかしPLMシステムの場合は「統合管理されている製品データを業務に合わせて提供する」ということを実現しなければいけません。

データを統合管理するということは比較的ITの得意な分野で実現することはそう難しくないのですが、この統合管理されているデータを“業務に合わせて”提供するということがPLMシステム実現のハードルを高くしているといえます。

またPLMシステムは特定の部門だけで使われるのではなく、PLMシステムで管理されているデータは多くの部門で共有されると共に、業務によって異なる活用のされ方をします。

様々な部門でデータを見るということは統合管理されているデータをそのまま見せるのではなく、作業のフェーズやタイミングに応じて見えるデータをコントロールないと、欲しいデータを欲しい人が欲しい形で入手することができません。

このように、使う部門毎に異なる個別の要件をシステムに反映することが必要な点が、PLMシステムの導入を難しくしているポイントです。

「統合管理されているデータを複数の部門や業務で共有し、部門毎の業務にあった形でデータを提供するPLMシステムなんてのはコンセプトだけで本当に実現している企業はあるのか?」といった疑問をぶつけられたり、相談されたりしますが、私の知るだけでも下記のような事例があります。

図1

これらの事例では設計部品表の管理やCADデータおよび設計変更管理だけでなく、製造指示や治工具管理、組立プロセスの管理や配送管理など、製品のライフサイクルにかかわる様々な業務に対応できるような形でPLMシステムを導入していることが分かります。

これらのPLMシステムの導入に成功している企業にはいくつかの共通点があります。

PLMシステム導入を成功させている事例に共通する、システム構築の際にクリアした三つの要件を次回以降紹介して行きたいと思います。

-久次 昌彦-

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